すずめの戸締まり

2023/01/02

読書

『小説 すずめの戸締まり』

新海誠


映画を見て、種々気になるところがありせっかくだしと小説も読んだ。


序盤、自転車に乗って海を見て、SNS映えしそうな構図にいい気分になったあと突然に「ふーん。と、私の中の一部が呆れる。海を見ながらそんな気分なんて、ずいぶんお気楽だね、君。」とさめる様子などは初見では理解できないし、映画で表情が曇るだけからそれを読み取るのは流石にむずかしい。

そういう感じで、人物、特につばめと環さんの心情については色々と補足されてよかった。


芹澤さんの選曲は環さんに合わせたつもりのものだろう、と映画の時から予想はしていたが、小説でははっきりとそう書かれていた。

ただ、環さんは2022年時点で40歳、1982年頃の生まれだとすると、「ルージュの伝言」「夢の中へ」という70年代ポップスは正直古すぎる。


2000年頃生まれの芹澤さんにはそのへんの区別がつかず・・というような描写なのか・・ 設定の解釈はともかく、実のところ、作者が「ルージュの伝言」を流したかっただけではないかという気はする。ダイジンの描き方など、魔女の宅急便のジジに寄せている雰囲気は感じるので。

本当に環さんの年代に当てて90年代ポップスが流れてもちょっと雰囲気は違う気がするし。


一番気になっていた、閉じ師・要石関係の設定については、特に追加の情報はなかったように思う。


つばめと環さんは閉じ込めていた思いや記憶の蓋を開いて向き合うことで前に進むのに、閉じ師業自体は扉に鍵をかけ、日常を重しにして大地に押し込めるという逆向きなところがいまいちしっくり来ていない。